大川硝子工業所

読みもの

時に無謀さを持ちつつ、やりたいことをやり続ける

僕の好きな人 vol.8 -後編
Guest 坂本真理さん(デザイナー)

ガラスびんを軸としながら、さまざまな分野の方とともに日々活動している大川硝子工業所。そんな大川硝子にゆかりのある人と代表の大川が、仕事や生活にまつわるあれこれをトークする「僕の好きな人」。第8回目の対談のお相手は、デザイナーの坂本真理さんです。

前編では、二人の出会いから地球びんのデザイン背景について振り返りました。
後半では、坂本さんが手掛ける商品「ヤッホーてぶくろ」についてや夫婦で働くこと、今後の展望について語り合いました。

初期衝動のヤッホーてぶくろ

大川 ここからはマリちゃんが手がける「ヤッホーてぶくろ」について聞きたいんだけど、かれこれもう10年経つよね。あれはどういった背景で生まれたの?

坂本 当時働いていた会社の近くに美学校という学校があって、デザイナーの大原大次郎さんの講座に通っていたんです。その中で、二つくじを引いてそれぞれの言葉を組み合わせた作品をつくる課題があって、「やまびこ」と「つくる」という言葉を引いたんです。そこで、手袋に「ヤッホー」という文字を刺繍したらいつでもやまびこをつくれるんじゃないかと思って、市販の手袋に刺繍したのがはじまりですね。それを周りの受講生がすごく面白がってくれて「商品化できるんじゃない」と言われて、ちょっとやってみようかなと思ったんです。

大川 そこから実際に行動に移せるのがすごいよね。

坂本 それで修了してから、大原さんに紹介していただいたグッズ制作の会社を通してつくったんです。大原さんの名前を出して売っていいといってくださって、感度の高い人に見つけてもらえるようなお店に絞って展開しました。渋谷のSPBSや名古屋のON READINGや広島のREADAN DEATなど、大原さんがポップアップをやるようないいお店ばかりで。
売り切るのに3年ぐらいかかりましたけど、その時に原動力になったのが広告写真を撮る楽しさでした。モデルを7Aちゃんに、写真を山川哲矢くんに撮っていただいて、商品の価値以上に良い写真になってそれが売上に繋がったと思うんですけど、自分一人でディレクションしたのは初めてだったので、その時に高校生の時に写真部でやりたかったことと繋がった感覚があったんですよね。

大川 クライアントワークではなく、自分のブランドとしてやりたいことが全部できたということだよね。

坂本 そこから5年後に、ある手袋メーカーさんから声を掛けていただいて、指先に導電糸の通ったタッチパネル対応の手袋にバージョンアップして再リリースしたんです。メーカーを通すことでPLAZAやMoMA Design Store Japanといった規模のお店でも売ることができ、最初よりもずっと多くの人の元に届けることができました。

大川 思いついたアイデアを商品にして売ろうってかなり勇気がいることだと思うんだよ。個人でやるならお金だってかかるわけだし。それをおもしろいからやってみようと、見切り発車的に動けるところには結構感化されてるんだよね。あと、内輪で終わらずに商品としてちゃんと落とし込んで、いいお店に流通させているところもすごいと思う。身銭切ってちゃんとやり切るというところにはかなり影響されてるなぁ。

坂本 今だと怖気付いてたかもしれないですけど、当時の勢いと周りのみんなが応援してくれたからできたんだと思いますね。

大川 若い頃に勢いをもってやるって大事なことだよね。

夫婦で働くということ、そしてこれから

大川 個人的にちょっと聞きたいんだけど、マリちゃんは夫婦で一緒に仕事してるよね。「よく一緒にできるね」って言われない?

坂本 言われます。一緒にやる大変さはもちろんありますよね。私は結構思いついたことをすぐ話してしまう方で、家族でご飯を食べている時も仕事の話をしちゃうんです。でも、それだとメリハリがつかなくなってしまうので、LINEグループもプライベート用と仕事用に分けて工夫してますね。

大川 へ〜! おもしろい。うちも、よくやってるねと言われるけど、踏み込んでいい場所とそうでない場所をわきまえるってだけの話だったりするよね。それは夫婦に限らず誰に対しても当然なことだけど。
逆に一緒にやっていてよかったなと思うことはある?

坂本 一番よく一緒に仕事をするのはミュージックビデオの制作なんですけど、基本的に二人でキャッチボールしながらつくるので、仕事の進む速度が圧倒的に速いと思います。

大川 どうやって二人でアイデア考えていくの?

坂本 まずはそれぞれで曲を聴いてイメージを膨らませるんですけど、第一印象が結構一致するんですよね。同じカルチャーで育っているから感覚が近くて、説明しなくても伝わるというやりやすさがあるかな。

大川 それは僕もBINKOPの映像をつくってもらった時に思ったな。同世代というわけではないけど、似たような環境にいたから通じるものがあったよね。

坂本 そうですよね。あとは私が無謀なアイデアを言って、雄太(関山さん)が現実に落とし込むというやり方なんです。撮影し終わって編集の段階でもキャッチボールしていくんですけど、私の方が映画を観る機会が多いから編集のアイデアをいろいろ出して、雄太がそれを実現していくような流れで上手く進めてますね。

大川 マリちゃんの方が無謀なのはちょっと意外だったけど、上手くバランスとれてるんだね。

坂本 困った時に励まし合えるのも心強いです。仕事の状況がすぐわかるので、忙しそうだったらその分家事をやるから集中していいよって言ってあげやすいかな。

大川 確かに違う会社でそれぞれ働いてたら、聞かないとわからないもんね。
うちも奥さんは僕よりも感覚が鋭くてはっきり意見を言ってくれるから、判断に迷うと頼るな。長い関係があるから信頼できる部分も大きいと思う。
それじゃあ最後に、今後の展望は何かある?

坂本 新しいヤッホー商品のアイデアがあって、やりたいことがものすごくあるんですよ。ゆくゆくは大川硝子のように海外に行きたいですね。

大川 海外は投資だと思って、どんどん突き進んでほしいな。何がきっかけになるかわからないしね。

坂本 デザインのことで言うと、改めてエディトリアルデザインをもっとやりたいなと思います。原点に戻りたいというか。
あとは、今後AIの時代に進んでいく中で、人間にできることを考えた時に、やっぱりデザインにおいては話を聞くことがとても重要だなと思ったんです。それで今カウンセリングの勉強をしていて、肉体を持って人の話を聞くということの意義と技術を磨いていきたいと思っています。

大川 相変わらず野心に溢れていていいね。

坂本 やっぱり子どもが生まれてから考え方がすごく変わったと思います。カウンセリングの勉強を始めたきっかけの一つも、子どもの話をちゃんと聞けるようになりたいと思ったことがあって。子どもを育てながら自分も育ててもらいつつ、仕事への向き合い方にも影響していると思いますね。

大川 確かに子どもから学ぶことは多いよね。これからも夫婦と子どもたちと励まし合いながら頑張っていきたいね。